百合丘小学校の開校記念日を利用して、美術館見学に行きました。
アート・造作の時間で、自分を表現することにやや恥じらいを感じる子も出はじめたため、芸術は上手い下手ではないということを伝えることが目的でした。
子どもたちは、それぞれ良いところ、それぞれの興味関心がありますが、最近、人と比べることに慣れてしまっている(?)子たちは、自分が人と比べようがないほどに違うところがあると戸惑いを感じ、それを恥じ表現をしなくなっているのではないか。
早くも相対評価の弊害で、「自分は素晴らしい」という絶対評価による自信がなくなってきているのではないか。
そんな心配から、岡本太郎美術館に行きました。
岡本太郎は著書「今日の芸術」において、
「今日の芸術は、
うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。」
と宣言しています。
その根拠として、すぐれた芸術には飛躍的な創造があり、既成の教養や知識では理解し判断できないからということを述べています。
そしてこの節の最後を、
「うまいから、きれいだから、ここちよいから、−
という今日までの絵画の絶対条件が全くない作品で、しかも見るものを激しく惹きつけ圧倒されるとしたら、これこそ芸術の本当の凄みであり、おそろしさではないでしょうか。
芸術の力とは、このように無条件なものだということです。これからの芸術は、自覚的にそうでなければならないのです。」
と締めくくっています。
岡本太郎は1954年、今から60年以上前に芸術についてこのようなことを述べていますが、これは現在の人材育成に必要なことそのものではないでしょうか。
決まったことに正しい答えを速く出せるという人材よりも、「自分で考え、行動する人材」が求められている。
自己表現をすることは絵に限った話ではありません。
自分で考えて出した結論が他人と違うものであっても、自信を持って主張できること、これこそがこれからの益々もとめられる自己表現なのではないかと思います。
ネイチャリングルームの名前の由来である「Nature」という単語は、「自然」という意味の他に「あるがまま」という意味があります。
「あるがまま」成長し、良いところを伸ばす。そんな思いが込められています。
様々な体験を通じて、自分なりの考えを持って、成長してくれたらと思います。
子どもたちは、岡本太郎の作品を見て、「怖い」「わからない」と率直な感想を述べていました。
小学生ですから、もっと奥深いことも感じているのだと思いますが、語彙の問題で表現できないのだと思います。
遠足から帰ってきてからすぐに、言葉ではなく絵で、自己表現をしてくれた子がいました。職員一同は報われた気持ちです。