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よく遊ぶ子は学力が高い?

2015年 9月 3日

「よく遊び、よく学ぶ」という言葉はよく耳にする言葉ですが、よく遊ぶ子は学力が高いのでしょうか?

この疑問について調べてみました。ただし、ここでいう遊びは、実体験が伴う遊びを遊びと呼ぶことにしたいと思います。逆に言えば、手先等しか使わない仮想の世界で遊ぶ遊び、いわゆるゲーム(テレビゲームや端末型ゲーム機)は含みません。

文部科学省中央教育審議会の平成24年度の答申によれば、自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがある小学生の方が理科の平均正答率が高いことがわかりました。

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また、独立行政法人国立青少年教育振興機構の平成22年度調査では、子どもの頃の体験と大人になってからの意欲・関心等との関係について、小・中学生時代の体験が豊富な大人ほど、意欲・関心や規範意識が高い人が多いという結果がでています。

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「自然体験を例にとれば、自然と触れ合う中で直接的に学び、理科を中心に学力向上につながることがある。また、自然体験などの豊富な体験が子どもの意欲・関心を増長し、子どもが様々なことに取り組むことよって、間接的にも学力が向上することがある。」というように解釈できるのではないかと思います。

また「なぜ体験学習なの?パート1」で述べた通り、5感を駆使する体験が脳に良い影響を与えている結果かもしれません。

ネイチャリングルーム学童保育では、「よく遊ぶ子は学力が高い」ということを信じて、質の高い遊びができる環境を提供しています。

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なぜ体験学習なの? パート2

2015年 8月 25日

なぜ子どもたちに体験学習が必要なのでしょうか?

それは子ども達の発達特性にも理由があります。
20世紀を代表する心理学者のジャン・ピアジェによれば、子どもの発達には段階があり、0〜2歳は感覚運動期、2〜7歳は前操作期、7〜12歳は具体的操作期、12歳以降は形式的操作期と呼ばれています。小学校に入学する6〜7歳の時期に前操作期から具体的操作期への移行があります。
この段階では、数量把握に重要な概念のひとつである保存の概念が獲得されます。
この時期の子どもの特徴に、底が広く浅いコップに一杯入った水を、底が狭く深いコップに移したとき、子どもによっては見え方に惑わされ、水が多くなったとか少なくなったとか表現することがあります。
実際には、水の量は保存されており、変化はないのですが、この概念(保存の概念)を獲得していない子どもはこのように反応するのです。幼児期にも概念の発達は進みますが、まだ自分中心に物事を捉えており、知覚に左右されやすいのです。

7〜12歳になってくると具体的な物があれば、この保存という概念を物を通じて理解できるようになります。
つまり、具体的な物を利用する教育が、この年齢の子ども達には適しているとも言えます。
具体的なものによらず、抽象的な思考や記号による思考ができるようになってくるのは、12歳以降の形式的操作期に入ってからです。

ここで算数の問題を考えてみましょう。
「長さ1mで重さが2kgの棒があります。長さ3mでは重さはいくつでしょうか?」
多くの大人の皆さんは形式的操作期におりますので造作もなく、2kg×3m=6kgとすぐに答えが出せるでしょう。
ところが、教科書や黒板にこの問題が文字で書かれていたとしても、解くことが難しい子どももいます。
教科書が掛け算を習う場所だから、勘を働かせて闇雲に掛け算をして、答えだけ合わせる子どももいます。
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それはなぜか?

具体的な物をもって理解する発達段階にある子どもに、文字に書かれた抽象的な重さ、長さという概念で問題を解かせようというところに無理があるのです。この問題を解けない子どもは、おそらく頭の中で、1mの棒があってそれを3つつなげたのが3m棒だから掛け算だという想像ができていないのでしょう。
このような発達段階にある子どもに、掛け算の意味を伝えるには、具体的な物をもってやるのが良いと考えています。
以前に出てきた多摩川イカダ下りのイカダでもいいですし、料理をするときの調味料でもいいでしょう。具体的なものを持って掛け算の意味を体感するこういうことが大切で、そうした体験を通じて、子どもの頭の中に掛け算という概念が定着するのではないでしょうか。

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大人の目線では当たり前のことでも、子どもから見れば未知のことばかり、机の上だけで学んでいても、真の意味で成長はしないのではないでしょうか。具体的な物を通じた体験をもって、知識ではなく、実践力をつけるのが、ネイチャリングルーム学童保育の体験学習です。

(参考文献:「人間の発達と学習」2001年 立木徹・他2名、玉川大学通信教育部)

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なぜ体験学習なの?パート1

2015年 8月 3日

ネイチャリングルーム学童保育では、体験を重視していますが、なぜ体験学習が大切なのでしょうか?

その一つの理由は、脳の構造にあると考えています。

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脳科学者医学博士の加藤俊徳氏の著書「脳の強化書」によれば、脳には1000億個を超える神経細胞が存在しており、これらの神経細胞は役割別に集団(脳番地)を形成しています。脳は思考系脳番地、感情系脳番地、伝達系脳番地、理解系脳番地、運動系脳番地、聴覚系脳番地、視覚系脳番地、記憶系脳番地から構成されており、これらの脳番地が連携し働くことで、人は活動しています。

例えば、英語のスピーチを聴いて、日本語訳を紙にまとめるという活動の場合には、聴覚系脳番地が働き(発音を聞き)、理解系脳番地が働き(意味を理解し)、伝達系脳番地が働き(日本語に表現し)、運動系脳番地が働く(手で書く)という流れになります。

別の例では、ある曲を聴くとその頃の思い出が脳裏に蘇るといったことも挙げられます。この例では、曲と一緒にある知識が脳に蓄積されたという意味で、体験学習が知識を脳に定着させやすいことを示している実例と言えるかもしれません。

 

ネイチャリングルーム学童保育でいうところの体験学習では、この脳番地の連携の仕組みをうまく活用しています。つまり、一つの学習テーマから複数の脳番地を刺激し、様々な脳番地同士の連携を効率的に強化しているのです。

通常の机上の学習は、視覚系脳番地と記憶系脳番地と思考系脳番地を中心に強化するものと捉えています。一方、ネイチャリングルームの体験学習は、学習以外の目的が存在するため、遊びによる「楽しい」という気持ち(感情系脳番地)や人と人とのコミュニケーション(伝達系脳番地)、様々活動(運動系脳番地、聴覚系脳番地など)も同時に強化することができます。

 

「脳の強化書」によれば、神経細胞は加齢とともに減少する一方、神経細胞をつなぐネットワークは年々成長し、20代から40代が最も成長するとも言われております。

ネイチャリングルーム学童保育では、この著書の考えを踏まえ、子ども達が20代から40代を迎えた時に、神経細胞をつなぐ多様なネットワークを形成するための下地を作ります。神経細胞と神経細胞がつながるためには、接続ポイントが必要であり、体験学習の結果、脳番地に蓄積された体験(過去の体験)が、接続ポイントになると考えています。したがって、体験学習では、子どものうちにこの接続ポイントをたくさん作ることを目指します。「接続ポイントをたくさん作ること=たくさんの体験」と捉えているからです。

それでは接続ポイントをたくさん持つとは、何を意味するのでしょうか?

それは、それぞれの脳番地に接続ポイント(過去の体験)をたくさん持つ人が、将来、神経細胞をつなぐネットワークをたくさん形成しやすい人、いわゆる地頭力がある人ということを意味するのではないかと思います。逆に言えば、たくさんの体験をした人が将来の地頭力がある人ということだと思っています。

人は全く新しいことを思考したり、創造(想像)したりする時、過去の経験と照らし合わせたり、他の分野で似ている事象を見つけて、それを踏まえて仮説を立てて、思考を展開したりします。この際、思考や創造(想像)を巡らす広さは、神経細胞をつなぐネットワークの多様さに大きく関係しているのではないでしょうか?

思考の選択肢が広がれば、問題解決の幅も広くなり、ひいては人生の選択肢も広くなるといっても過言ではないかもしれません。

このように、ネイチャリングルーム学童保育の体験学習は、子どもの思考力、創造力を強化し、人生の選択肢をも広げることに資すると考えています。

本コラムでは、脳科学の観点から体験学習の大切さをご説明しました。次回は、子どもの発達特性の観点から体験学習の大切さをご説明したいと思います。

 

 

 

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